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 「倭寇」といえば、14~16世紀にアジアの海を暴れ回った「海賊」が思い浮かぶ人も多いだろう。ただ、この「倭寇」、見方によっては現代アジアにも存在し、今も中国という国家を揺さぶっているという。近著「倭寇とは何か」(新潮選書)が話題の歴史学者、岡本隆司さんの大胆な見方とは?

写真・図版
倭寇図巻(部分)。弘治4年(1558)に天兵(明軍)=左=が「倭夷」を「粛清」した物語として描かれたと見られる=東京大学史料編纂所所蔵

 倭寇は東アジアで略奪や密貿易を行った海賊のような人々で、その担い手は、14世紀後半がピークの前期倭寇では主に日本列島の人々だったのに対し、16世紀の後期倭寇では、中国大陸出身者を中心に日本やポルトガルなどの様々な人々がいた――。歴史の教科書では、こんな説明が一般的だと思います。

 ただ実際は、倭寇は単なる海賊ではありません。「倭」は日本の蔑称、「寇」は襲撃・侵入を意味し、あくまで中国・朝鮮の政権側からみた言葉です。その正体は、権力・当局に服さず、国境を越えて活動する民間商人やその関係者の「ネットワーク」だったのです。

 歴史を振り返ってみましょう。

「孫文も『倭寇』の一人」

 前期倭寇の時代は、ちょうど…

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